底冷えした朝のさらに底に
底冷えの朝、木造40年の安アパートの角部屋で
男は二重の毛布にくるまり震えていた 時計は6
時を指していた。
昨日、湯を沸かす電気代をケチって湯たんぽを
沸かさなかったことを甚だ後悔した
足の指はすっかり冷たくなっていた
ぼんやりした頭で今夜も夜勤だと思うと
底冷えの朝のさらに底に深く潜り込みたい
気になった
だらだらと大学卒業以来コンビニの夜勤のバイトを5年続けている
枕元には昨日寝る前に読んだ西村賢太の本と官能小説があった
路の氷は溶けずにまだ残っていると思うと
それもさらに鬱々とした気分に拍車をかけた
毛布を引き戻し 目を瞑った
いらぬ天窓からは日が差し込み煩わしかったが
引っ越しなんてできない身分のため
眠れるときを待った