或るフリーターの手記

29才フリーター、日々の雑感を記す

「憂き世」 第2話 ~招かれる~

 ~招かれる~

 

男は立ち尽くしていたが、暫くすると我に返り、

(死んだのなら、ここはどこなんだ?)

と疑問が浮かんできた

 

とりあえず、男は眼前にそびえる巨大な建造物の方に歩くことにした

 スタスタと建造物の方へ歩を進めるのだが、一向に近づかない

これは困ったと男が悩んで俯いていると

 

「岡倉様~」

と建物の方から男を呼ぶ声が聞こえた

 

顔を上げて声の方を見てみると、1頭の青い馬が金色の鬣を揺らして、こちらに駆けてくるようであった。馬には翼が生えていて、片翼が白くふわふわした羽で、もう一方が暖かな橙色だった。駆ける姿は美しく舞っているようにみえた

 

青馬は岡倉の前で急ブレーキを踏んだように止まり

「遅くなって申し訳ございません、立て続けに人がお亡くなりになりまして色んな方の相談に乗ってをおりましたら遅くなりまして・・・」と早口で喋った

 

岡倉は馬の美しさと動物が言葉を喋っていることに呆気にとられてしまい、話の内容が全く入ってこなかった。

「あの、すまない、よく分からなかったのだが、君は何で、ここは何なんだ」

岡倉はたどたどしく尋ねた

「あ、そうでしたね、私は岡倉様の案内役を務めますリースと申します」

リースは行儀よく一礼した

「そして、ここは死者が次にどのような人生を送るかを決めるための場所でございます」

リースはあどけない少女のように微笑み、明るく言った。

 

岡倉はどういう気持ちでその言葉を受け止めたらよいか、まだ決めかねていたが

さらに尋ねた

 

「じゃあ、あのバカでかい、スカイツリーの何倍もあるような建物は何なんだ

上が全く見えないじゃないか」

 

リースは少し考え

スカイツリーというのは、存じ上げないのですが、、あちらの建物は魂の宿屋で『可惜夜』と呼ばれています」

リースは屈託のない笑顔で説明した

 

「あ・た・ら・よ?」

 

岡倉は良く分からない宿屋の見えない屋根を探し、呟いた