或るフリーターの手記

29才フリーター、日々の雑感を記す

星の名前は知らない

遠くで星が輝いていた、、

男はガシャガシャとうるさい世界に疲れていた
夜に働き、朝に眠るそんな暮らしに疲れていた

みんな疲れている
そんなことは分かっているのだが、、

久々に仕事が休みだったので、ボロアパートのドアを開けて、外に出た

外に出る際、がしゃんと袋にまとめておいた空き缶が音を立てた

「最近、忙しくて部屋の掃除もしてなかった」と思った

男は詩人になりたかった
男は画家になりたかった

しかし、今だ何者でもなかった
ただ、いるようだ。この世界に
(ほんとうにおれはいるのか?)

外は冷たい風がふいていた
風は体を通り抜け、心を貫いて、どこかへ去っていった

全く、気まぐれだな
男は風に嫉妬した、気ままな風の自由な態度を羨ましく思った

煙草に火をつけようとしたが、ライターの火も冷たい風に遮られカチカチと渇いた音を鳴らすばかりだった

全く、不愉快だ、なにがラッキーストライク
幸運にぶち当たるなんて、嘘っぱちだ!


仕方ないので火のない、煙草を咥えた
寒空には、爛々と星が輝いていた
(あぁ、冬の星ってこんなに綺麗だったのか、、)

星の名前なんて知らない、、
興味もなかった

名前なんて飾りでしかないと思っていた
(その考えは今でも変わらないが)

それでも、その時は無性にあの星の名前を知りたかった、、空に輝く星の名前を

もちろん、それはそこにあるというだけで綺麗だった。涙がでるほど綺麗な空と星だった。

もう何が、自分の心を掴んで離さないのか、よくわからなかった

ただ、あの日、あの空を見たとき、なぜだろう?
響いた、、教会の鐘から、人間の不純さを取り除いた純粋な音が、、朝に鳥がただ鳴くように響いた

ほんとうに、ほんとうに綺麗な夜空だったんだ