或るフリーターの手記

29才フリーター、日々の雑感を記す

明け方の憂鬱 

「いらっしゃいませ。環境保護のため、プラスチック削減にご協力ください」

 

夜明け。

機械的なアナウンスが繰り返される店内に

緊張が走った。

 

「おい、レジ袋って言ったよな?」

「申し訳ございません、、」

男の店員がややけだるげに、頭を下げていた。

 

「なんだ聞こえねーよ。店員の態度じゃねえだろ。

これで何回目だよ、何度も同じこと繰り返すんじゃねぇ!」

 

客はもう火の中の栗

もう二度と来るかと吐き捨て

商品をレジに叩きつけ、店から出て行った。

 

男は冷めた目つきで、見送りながら

(あの人は、何の曲を聴いていたんだろう?)

と客のイヤホンから流れる曲が気になっていた

 

叩きつけられた商品を、ゴミ箱に投げ入れ

レジ奥のドアを開け、事務所に入ると

 

裏でその始終を監視カメラで覗いていた同僚は男に

「大丈夫だった?、あの人、いっつもキレていくけど、

嫌なら来なきゃいいのにさ、、」と慰めるように言った

 

男も応答するように、

しかし、少し曖昧に左の口角だけを上げて笑い

「トイレ掃除してきますね、、」

と同僚に言い、

窓からちらと紫から鮮やかな橙に変わっていく

空を眺め

トイレの中へ消えていった。。。

 

同僚の加納は30代後半

8時間のアルバイト中、暇になったら事務所の机にドカリとすわり

足を組みながら、タブレットをいじっている

 

15分のトイレ掃除を終えトイレからでると

空はすっかり明るく

ちらほら人影も見えた

 

街が重い腰を上げ、走り出す準備を始めていた