うたうひと
朝もやのかかった公園
からからの空気の中、銀杏の香りがしております
一人の男がベンチに座り歌を歌っているようです
申し遅れました
今喋っております私は灰色と茶色とが混ざりあい
しましまのせんが入った、尾っぽがそこらの猫より少しだけ長い野良猫です
話を戻しましょう
男は朝から熱心にギターを弾いているようすで、
全く得心のいかないように首を傾げております
男はAmの音が好きなようで、その音がたくさん聞こえてきます
「こんにちは」
私が挨拶すると
男がコクりと頷き、軽く微笑みました
「なんで朝からギターなんて弾いているのですか?」
(その日はとても寒く全くいい日和ではなかったので)
「弾きたいから弾くんだ」
男は自問自答するように呟きました
私はすぐに飽きてしまい草の影へざぁざぁと行くことにしました
全くヘンテコな生き物だと思いました